古文
ある河のほとりに、蟻あそぶことありけり。にはかに水かさ増さりきて、かの蟻をさそひ流る。浮きぬ沈みぬするところに、
鳩こずゑよりこれを見て、「あはれなるありさまかな。」と、こずゑをちと食ひ切って、河の中に落としければ、
蟻これに乗って渚に上がりぬ。
かかりける所に、ある人、
竿の先に鳥もちを付けて、かの鳩をささむとす。蟻、心に思ふやう、「ただ今の恩を送らむものを。」と思ひ、
かの人の足に、しっかと食ひつきければ、おびえあがって、竿をかしこに投げ捨てけり。そのものの色や知る。
しかるに、鳩これを悟りて、いづくともなく飛び去りぬ。
そのごとく、人の恩をうけたらむ者は、いかさまにも、その報ひをせばやと思ふ志を持つべし。
『伊曽保物語』
基本問題①
( )に適当な語句を入れなさい。
これとはどのような様子を指しているのか。次から選びなさい。(⑥)
落としければの意味として適切なものを次から選びなさい。(⑧)
かかりける所の意味として最も適切なものを選びなさい。(⑨)
送らむの意味と、誰が「送らむ」なのか答えなさい。(⑫)(⑬)
基本問題②
そのものの色や知る。とあるが、どんな意味か。適切なものを一つ選びなさい。(①)
